「教員不足」教育学部入試面接より労働環境の異常さが最大の理由では?
「お知り合いの方で、教員免許状をお持ちの方がいれば、是非紹介してくださるようお願いします」。
今年1月、福岡県大野城市の小学校のほぼ全員の保護者に届いたメールだそうです。
県教委の福岡教育事務所が管轄する市町の教委と小中学校を通じて呼びかけたそうで、
保護者は「そこまで先生が足りないのかと驚いた」と言っているんですね。
そんな「教員不足」は全国で特に九州各地で深刻みたいなんですよ。
NHKが全国67の教育委員会に取材したところ、
今年4月の始業式の時点で、32団体が定数を確保できておらず、少なくとも717人の教員が不足していることが発覚し、
教頭が担任を兼務したり、中には授業が通常通りにできなくなる学校もあるみたいなんですね。
我が郷土熊本県の高校の場合も、
時間数が少ない科目の非常勤講師の確保に毎年度初めに困難をきたす学校が多いみたいですよ。
この教員不足の大きな原因として、
ひとつには欠員を補充するための「臨時採用」の教員が確保できないからみたいで、
少子化が進み、今後も子どもの数が少なくなっていくことが予想されているため、
教育委員会が正規採用の数を減らして臨時採用枠を増やす方針を取っていることが背景にあるみたいですよ。
この「臨時採用」は非正規雇用ですから生活が不安定ですよね。
だから応募する人は躊躇するかもしれません。
確かに正規採用なら希望者はいるでしょうが、
「臨時採用」の時間講師は夏休みや冬休みには仕事がない、いわばアルバイトなので食べていけないですよね。
結局、定年退職した人など、
収入が少なくても困らない人を探すしかないので「見つからない」ということになるのでは・・・。
それを見越したように教育委員会の中には、一定期間、「臨時採用」として勤務すれば、
正規教員になるための採用試験の一部を免除するなどの措置に乗り出すところも出てはいるんですが・・・。
もうひとつが働き方など待遇面の改善ですね。
どうも教員の仕事の範囲が無限定に拡大しすぎてしまっていることにあるのではないでしょうか。
今の日本の教員は、授業やそれの準備だけでなく、
部活動の指導、学校行事の準備、生徒指導や進路指導、教材の発注、保護者への対応や家庭訪問などなど、
およそ「学校」や「生徒」に関連する仕事ならなんでもさせられているんですね。
どれかひとつでも手を抜くと、
「あの教員は問題だ」と言われてしまい、全部こなしてはじめて「普通の先生」とみなされるみたいで、
それに見合う報酬なのかという疑問もあります。
実際、現役教員の声を聞けば、
・頑張っても評価されません。
決して高給ではないのに税金泥棒のようなことを言われることもあります。
毎日残業手当なしで部活動を受け持ってもらいます。休日も同じです。
お昼休みは給食指導他勤務時間と思いましょう。
持ち帰りの仕事は当然あります。
モンスターペアレントは必ずいます。
「夕べから子供が帰ってこないんですけど、今から私も主人も仕事に行かなくてはいけないので、
先生探してもらえますか?」と朝自宅に電話がかかってくることもあります。
こんな感じですけど募集してます。って
ちゃんと付け加えなきゃ。
・教員は24時間労働です。
土日の部活動はボランティアです(が、やらないと苦情が来る)。
土日の部活動は手当か代休が選べるようになっていますが、手当は4時間以上活動しなければつかないし、
ついたとしても最低賃金以下、4時間やっても1日やっても同じ金額です。
代休はなんだかんだ取れません(授業の進み具合とか生徒指導の関係とか)。
平日の部活動は勤務時間外に行われています(が、残業手当はない)。
生徒が家に帰らなければ夜中でも探しに行きます。
プライベートはありません(先生、昨日○○にいたでしょ、昨日彼女来てたでしょ、など)。
給料も金額だけ見て高い、と叩かれることが多いけど、労働内容の対価としては割に合っていません。
「なりたくて教員になったんでしょ」とよく言われますが、情熱だけでは仕事していけません。
体力も神経も給与も削られっぱなしで情熱が枯渇する日もそう遠くないのではないでしょうか。
そして今は教員をやめた方の声は、
・公立中の教員でした。30年以上前、20代半ばでとらばーゆ。
理科免なのに技術科を校長裁量で交付された臨免で担当し、技術科免許をもつ上司(教務主任)は美術を担当、
教材屋からずいぶん美味しい思いをさせてもらってた様子。
先輩方は生徒を話題にする猥談に興じ、生徒は暴れ、ここにいたら自分はダメになると思い転職しました。
現在は学校さんとも関わりの多い専門職です。
教職の経歴を話した途端にご自身の日ごろの悩みを打明ける先生も少なくありません。
過酷な労働環境と理不尽なクレーム、教科指導以外の校務分掌や生徒指導、手当も出ない休日の部活対応、
滞納生徒の集金立替、増えるばかりの市教委への報告書、非行発生時の警察対応、PTA役員方の接待…。
挙げたらキリがありません。現場は疲弊し切っています。
教員の仕事は罰ゲームでしょうか?これではなりてがいなくなるか、途中で辞める方がいて当然です。
・大学卒業後、4年勤め退職した女です。その後心身ともに元気になるまで時間がかかりました。
とにかく休みがありません。
一ヶ月に一日くらい部活のない日があったとしても、学校へ行き教材研究、自分の仕事をしていました。
市、県では働き方の改革は無理だと思います。何も変わらない…
国はどうか先生たちを守って下さい。
・教員時代、朝7時に家を出て夜は0時を回って終電にダッシュで駆け込む生活が週5でした。
土曜日も出勤して日曜日はくたくたでした。
授業に集中したいけれど、校務分掌もある。出張もある。宿泊の研修もある。接待もある。クラブ活動もある。
それでも教員を続けたかったです。主人の都合で辞めることになり今振り返るとよくできたなと思う。
もう一度教員をするか?って聞かれるととっても悩む。
生徒達が可愛いから先生方みなさん頑張っています。授業にもう少し時間をかけられる環境をお願いしたい。
こういう声を聞くと、
ますます教員のなり手が少なくなるように感じますね。
文科省の担当者は、働き方など待遇面の改善が論点にあがることを認めつつも、
「教員の仕事の重みとかやりがいが、ひとつの選択肢として確実に出てくるような魅力の発信」
を進めていきたいなんて言っていますが・・・。
ところで、
今日のニュースで、教育学部の入試に、面接を取り入れる大学が増えているらしいですね。
面接を導入した理由について、
「教員は勉強ができるだけでは務まらず、『人間力』が問われる。
どういう教員になりたいか具体的なイメージを持っているか、
生徒や保護者と良好な人間関係を築けるコミュニケーション能力を持っているかを入り口の段階で確認したかった」
とある大学の先生は言っているんですが、
面接で学力を見ることはできますが、人柄を見ることができると思ったら思い上がりかも。
面接する側、される側、両者がマニュアルを利用して対応するだけですから、
同じような答えしか返ってこないでしょうね。
また現実には、長い期間人物評価されてきたはずの校長や教頭も児童買春やセクハラで捕まっていますし、
短時間の面接では、コミュニケーション力はわかっても、人の本質はわからないと思いますよ。
面接官になるほどの人は「優れた人物」でしょうけど、「人格者」ではないですね。
有能者を探すのは向いていても、「人格」を見るのに向いているかどうか。
さらに、性犯罪を犯す先生の多くは、子どもへの愛情や熱意はあります。
先生を職業の1つとして、また、子供に対し、思い入れよりも、
客観視できる人の方が、性犯罪や精神疾患にはなりにくいとは思いますが、
そこを評価できるのか。熱意ばかり評価すると反対の結果になるのでは。
それにしても現場のことを全く知らない高校生を面接して、何が返ってくるのでしょうか?
やはり大学と現場がもっと連携して、インターンでの仕事を必修単位にすればよいかも。
現場の声をもっと聞いて、
お金かけなくてもできることはたくさんあると思いますよ。
いずれにしても、
この「教員不足」。
まず労働環境の異常さがあるブラック職場のイメージを払拭して、優秀な人材を集めることも大事です。
お金は出さないけど、「いい人が来てね」なんていうのはもう通用しない時代ですよ。
文部科学省も、もっと現実を見て、今、何が必要なのかを身を以て見聞きして、それに生かしてはどうでしょうか。