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熊本県荒瀬ダム解体撤去これもダムへの愛の形なの?

遠い昔の小学生の頃、
遠足旅行で行った記憶がある熊本県八代市坂本町球磨川に建設された荒瀬ダム。

その当時はダムを見るのを初めてで水が溜まっているのを見て、
怖かった記憶が蘇ってきます。

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そんな荒瀬ダムが2012年4月から解体が始まった時は、
「どぎゃんして壊すとや」(熊本弁ですが)と思ったものですが、

右岸先行スリット撤去工法」という工法で、
計画的にやっているみたいですよ。

 

この荒瀬ダムがなぜ撤去される運命になったかというと、
ダム建設当時から自然環境に対する不安は上がっていたが、
ダム建設後にはアオコによる水質障害が確認されるようになって、

 

鮎が釣れることで「宝の川」と呼ばれた球磨川近隣の住人からは、
荒瀬ダム反対運動が起こるきっかけとなったのと、

 

荒瀬ダムのメンテナンスを行う資金がダムを管理する熊本県にとって、
大きな財政問題となったこと。

 

さらに、
電力自由化の中で今後の電力収入はますます厳しくなることが予想されること。

 

さらに追い打ちをかけたのが水利権の問題で、
ダムを稼働させるには国土交通省に対して河川への水利権を申請し、
定期的に更新手続きを行う必要があるらしく、

次の更新を迎える前にダム撤去を本格化させる方向で舵を切ることになって、
2010年2月に「撤去」の方向で固まったそうです。

 

撤去が確定した後は、
日本で初めての本格的なコンクリートダム撤去として、
荒瀬ダムが全国のモデルとなるよう取り組むとして撤去が始まったみたいなんです。

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荒瀬ダム撤去の事例がどんなモデルになるのかというと、
「自然にもどす公共事業」として新しい形を提案しているんですね。

 

グリーンピース・ジャパン事務局長の佐藤潤一という人が言うには、
「人間も血管が詰まってしまったら、健康でいられません。
ダムは川という自然の動脈、静脈を詰まらせてしまう、
よってダムを一つずつ撤去していくことが、健全な環境を戻すというわけです」と。

 

また 「ダムの撤去」が最終目標ではなく、
「豊かな河川の流域環境を未来に引き継ぐ」ことが
最終目標だというビジョンを持っていることだと思う・・・と。

 

確かに昔は木材を組んだ筏や川船が行き交う航路として栄え、
川漁師がいくら穫っても減らないと豪語するほど大量の鮎が棲息し、
30センチを超す尺鮎が川床を黒く埋め尽くしていたというし、

川の水は飲用を含めて全ての生活用水に利用され、
流域の暮らしは球磨川と密接に結びついていたんですが、
 

「荒瀬ダム」が完成したら球磨川の悠久の流れが封印され、
その代償として熊本県で消費される電力の16%が供給されることになったんですね。

 

でも流れを制限されて淀むダム周辺にはアオコが発生し、
発電所の放水口では泡がはじける度に悪臭が立ちこめるようになり、

発電と共に氾濫を抑える“治水”を謳っていたダムが溢れ、
旧坂本村を洪水が襲ったりしたんです。

 

この時私も仕事関係で坂本村に行きましたが、
球磨川沿いの道路は流木やドロドロの土砂から悪臭がしていたのを覚えています。

 

そしてダムによって洪水被害が拡大したのではないかという不信感、
放水による振動被害など、
多くの問題に決着をつける時がきたみたいで、

 

ダム容認派の村長を住民投票で退け、
2002年に村議会はダム撤去を求める請願書を熊本県に提出し、
当時の潮谷義子熊本県知事がこれに賛同して、荒瀬ダムの撤去方針が発表されたんですね。

 

その当時を知る人は、
滞留水がダム撤去によって流水状態になったことで、

「ダムのおかげで濁って酷い臭いがしていた川でしたが、
今はご覧の通り、球磨川はきれいになった。本当に嬉しいですよ。」と。

 

やはり詰まっていたものを取り除いた結果なんでしょうね。

 

今では建設前にあった多くの瀬や淵は見た目にはほぼ戻っており、
釣りをする人や釣り舟なども多く見かけるようになったし、

 

鮎のエサとなるコケや藻も増えつつある状況が確認され、
透明度の高い流れの中の小魚の群れを見ることができるようになったみたいですし、

休日には、
水遊びをする子どもたちや釣りをする家族連れなども増えてきたそうです。

   

ただこんな話もあるみたいなんですよ。

それはこの荒瀬ダムの撤去が出たのは、
川辺川ダムの反対運動を押さえるために荒瀬ダムを撤去することで黙らせようと画策するためと。

 

この川辺川ダムは球磨川の支流、川辺川に国が計画した九州最大級のダムだったんですが、
清流が失われるとして根強い反対があったこともあり、
2009年9月に建設中止になりましたね。

 

また荒瀬ダムの藤本発電所での発電は水力だから、
CO2を発生しない、環境に優しい、クリーンエネルギーですが、
藤本発電所がなくなれば、CO2発生量が増加すると。

そして、
解体によって年間約7,400万Kw(約4万世帯分)の電力を失った事になると。

 

確かに水力はクリーンエネルギーですが、
ダム湖底に残る汚泥による環境への影響という意味では、
「ダムはクリーンエネルギー」とは言い切れないかも。

 

工事完了まで残り2年あまり、
荒瀬ダムの建設と撤去の教訓を、
熊本県だけでなく他のダム問題に活かしてほしいと心から願います。

 

荒瀬ダムに続く撤去の現場が出現したら、

日本の河川行政の明るい方向転換にもきっと繋がることでしょうね。

 

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